どこか物足りない。16/17シーズンの香川真司。14年にボルシア・ドルトムントに復帰してから、最も“プレー時間”が少なかった。
今季ブンデスリーガでは34試合中21試合に出場して、合計1,257分間プレー。そして1ゴール6アシスト。トーマス・トゥヘル氏が監督に就任して1年目の昨シーズンと比較すると、その数字は物足りないと言わざるを得ない。15/16シーズンは34試合中29試合に出場して9ゴール9アシスト。合計2,171分間プレーした。
単純にプレー時間だけを比べると、今季と昨季では2倍近くの開きがある。このような“合計プレー時間数”は、ゴール数やアシスト数に比べると、地味かもしれない。しかしゲームに出場し続けることは、時としてそれ自体が“勲章”となる。
例えば日本代表サイドバック(SB)酒井宏樹は、昨年の7月にハノーファー96からオリンピック・マルセイユに移籍した。ドイツからフランスへと国境をまたぎ、異国で改めての挑戦となったが、開幕からレギュラーの座を確保。終わってみれば38試合中35試合に出場して2,982分間プレーした。
ゴール、アシストが直接的に問われないSBのようなポジションを務める選手にとっては、プレー時間そのものが重要な評価軸だ。練習で積み重ねた経験値は、試合に出場して初めて血となり肉となる。
コンディション調整という意味では、日々のトレーニングで十分かもしれない。しかし情け容赦のない敵がいる試合の中でのトライ&エラーこそが、サッカー選手としての成長を促すものである。そういった意味でマルセイユ1年目の“2,982分間”は、全く新しい環境であったことも含めて、酒井の中に、何にも代え難いものとして蓄積されたはずだ。
リーグのレベルや所属するチーム、ポジションが違うので、酒井と香川の合計プレー時間数を単純に比較することはできない。しかしリーグ、所属チーム、監督、そしてポジションが変わらないのであれば、香川自身の昨季と今季のそれを比べることは可能だろう。
もちろんここで怪我という不可抗力を忘れてはならない。香川は前半戦の途中で右足首を痛め、完治に半年近い時間を要している。昨季と比べてプレー時間数が大幅に減った最大の要因でもある。また、負傷に苦しむ中での個人としての葛藤は、決して無駄なものではない。人間としての成熟を促すだろうし、悩んだ末、晴れて試合で活躍できれば、その喜びは何倍にも感じられるだろう。
しかし、ドイツカップの決勝で見せた香川の力強いプレーを振り返ると、やはり今季リーグ戦の“1,257分間は”物足りない。特にファンであれば、誰もが背番号23のコンスタントな活躍を見たいはずだ。
香川が、ドイツカップの優勝で何にも代え難いものを手に入れたのなら、来季は万全のコンディションでシーズンを闘い抜きたいところだ。そうしてドルトムントに復帰してから最長のプレー時間を確保できれば、これまでにないブレイクのシーズンとなるのではないか。ゴールもアシストも、まだまだ伸ばせるはずである。
文・大友壮一郎
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