原口元気、日本代表イラク戦で躍動 ヘルタでは何か別の進歩を遂げるか

写真:アフロ


まるでアトレティコ・マドリードのFWのようだった。13日に行われたロシアW杯アジア最終予選。アウェイで1-1のドローに終わったイラク戦で、日本代表FW原口元気は[4-2-3-1]のトップ下で先発出場する。


守備時には[4-4-2]の布陣で大迫勇也と2トップを組んだ。原口はファーストDFとして守備に奔走。最前線の選手がプレッシングを仕掛けなければ、チームの規律、ポジショニングがすべて崩れることになる、とはディエゴ・シメオネ監督の弁だが、そんなアトレティコの指揮官の指針に沿うような献身性を、原口はイラク戦で発揮した。もちろんそれはあくまでプレースタイルの類似性の問題だ。今夏に原口がマドリードのビッグクラブに移籍可能、ということは意味しない。


このようにすっかり守備面のハードワークが代名詞となった原口だが、本質はやんちゃなアタッカーのままのようだ。例えば、4月5日に行われたブンデスリーガ第27節のボルシアMG戦。ワントップのポジションで先発した原口は、試合後に「慣れないポジション」としつつ、「楽しさを感じてやれていました」と振り返った。「攻撃に専念できる分、いつもと景色が違ってゴールが近いので、まあ、楽しかったって言ったら変ですけど、そんなボールも触ってないしアレなんですけど、ゴール前にいれるっていう可能性を感じているだけで、少しわくわくしてプレーできました」


所属するヘルタ・ベルリンでの主戦場はサイドだが、昨季はフラストレーションを感じることもあった。昨秋は日本代表戦ではゴールを量産したが、クラブに戻るとなかなか欲しいタイミングで味方からパスが出てこない。ヘルタは首都を本拠地とするが、あくまで立ち位置は中堅だ。スタイルは守備重視。どうしてもボールを奪った後の型やアイデアに欠けた。原口が「特にヘルタはうまくいっていなくても勝つ試合も多い」と言うように、勝利は運に左右されるところもあった。


そんな戦い方をするチームの中で、守備のタスクを献身的にこなしながら、攻撃に転じたとしてもなかなか持ち味を発揮できなかった。ヘルタは、サイドに張ればパスがどんどん入ってきてリスクを冒せる、というチームではない。


もちろん原口にはチームの一員としての自覚があり、試合の中でチャンスは1人で作るものではないことを承知している。チームとして右で作って左を生かす、という形がハマったこともあった。しかし、やはりアタッキングサードでの連携が不足するヘルタでは、日本代表戦で見せたようなフィニッシュワークを発揮できなかった。


原口は昨シーズンを1ゴール2アシストで終えている。そこにはW杯最終予選を戦うためにドイツとアジアを往復して疲労を蓄積したことや、サロモン・カルーの再びの台頭により、右サイドでの起用が増えたことも関係しているだろう。何より先述のヘルタのサッカーの中では、原口が“やんちゃな持ち味”を生かせないのも仕方がない部分はある。 チェルシーでチャンピオンズリーグを制覇したカルーのような個の持ち主であれば、話は別かもしれない。だが献身的な守備とは違い、例えばサウール・ニゲスのような圧倒的な打開力を後天的に身に付けるのは難しいだろう。


今季のブンデスリーガを6位で終えたヘルタ・ベルリンは、来季はヨーロッパリーグに本戦から出場する。欧州の舞台で結果を出すために、首都のサッカーは変化するだろうか。それとも原口が、何か別の進歩を遂げるだろうか。


文・本田千尋

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