1つの時代が終わった。8月3日、パリ・サンジェルマンは公式HPでネイマールが同クラブとの5年契約にサインしたことを発表。ブラジル代表FWは、4シーズンを過ごしたFCバルセロナを離れる決断を下した。移籍金は2億2000万ユーロ(約290億円)で、サッカー選手史上最高額だ。ここに“メガ・ディール”が実現した。
よって“MSN”は、当然のことながら、解体する。ルイス・エンリケ政権時に猛威を振るった3トップ。ルイス・スアレスが加入して結成された14/15シーズン以来、ラ・リーガに限っても、3人だけで250ゴールを叩き出した。エンリケ監督にとって最後のシーズンとなった16/17シーズン、中盤がガタガタだったバルサが、リーグ戦を2位で終えることができたのは、“MSN”の力といっても過言ではないだろう。そんなクラブの象徴的存在にまでなったトリオも、いよいよ過去のものとなった。
ネイマールにとって、つまり“MSN”にとって、結果的に最後の試合となったのは、奇しくも“エル・クラシコ”だった。アメリカで行われたプレシーズン、インターナショナル・チャンピオンズカップ。7月29日、FCバルセロナは、マイアミでレアル・マドリードと対戦した。バルサの前線に君臨したのは、“MSN”。メッシ、スアレス、そしてネイマールだ。
ネイマールは“裏切り者”なのだろうか。今回の移籍騒動で、ファンは少なからず憤りを感じているという。世紀の移籍を決断したブラジル代表FWは、オイルマネーに屈したと報じるメディアもある。しかし、こと“最後のクラシコ”でのプレーを見る限りでは、ネイマールは、バルサでの職務を最後まで全うしようとしていたようだった。
守備では、味方と連動して積極的にプレスを仕掛け、自陣の最後尾まで戻ってタスクをこなした。前線では、たとえ数的不利でも積極的に1対1を仕掛け、カウンターの場面では、スアレスと平行して全速力で駆け出した。
そして2得点に絡んだ。7分にはエリアの左側の角で、イニエスタからパスを受けると、右足のアウトで横にボールを流す。ラキティッチのゴールをお膳立てした。50分には直接FKから、ピケの決勝弾をアシスト。終わって見れば、3-2の勝利に貢献した。
もちろんクラシコの数日前には、ネウソン・セメドと小競り合いの末に、練習を勝手に切り上げるなど、傲慢とも取れる姿を見せている。そんなネイマールの姿勢を見て、今回の移籍決定の報に接すれば、誰もが快く思わないだろう。
しかし、“MSN”の一員として最後のピッチに立ったネイマールが、バルサのユニフォームに背くようなプレーを見せることはなかった。相手は、“宿命のライバル”だ。それでも彼は“裏切り者”なのだろうか。
文・本田千尋
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