“最高のスパーリング”だった。8月8日、UEFAスーパーカップに挑んだマンチェスター・ユナイテッド。相手は昨季CL王者のレアル・マドリードだ。
7月23日のインターナショナル・チャンピオンズカップで、マンUは既にレアルと対戦している。アメリカで行われた前哨戦では、1-1のドローで90分間を終えると、PK戦の末に勝利した。しかしそれは、あくまでプレシーズンマッチに過ぎなかった。
マケドニアで再戦した“エル・ブランコ”は、見違えるように状態を仕上げていた。カゼミーロ、クロース、モドリッチ、イスコで構成された中盤は、まさに昨季CLの終盤で見せたようなパフォーマンスを発揮。絶えずフラフラするイスコを、マンUの選手たちは捕まえることができなかった。
序盤こそルカクに収めてカウンターを発動し、敵陣でボールを回すこともあったが、24分、DFラインの裏を突かれてカゼミーロに先制を許す。そして敵に主導権を奪わると、厄介な“流浪人”に止めを刺されてしまう。52分、ベイルとのワンツーでペナルティエリアをいとも簡単に崩され、イスコの左足にやられた。
“赤い悪魔”は、62分にルカクが1点を返すのが精一杯。素早くリトリートする堅い守備を崩せない。パスワークに翻弄される。鋭いカウンターを喰らう。力の差を見せつけられた。今季初の公式戦は、1-2で完敗。
レアル・マドリードに力の差を見せつけられた一戦で、マンチェスター・ユナイテッドが得た課題と収穫とは何だろうか。
そもそもマンUには、自陣に引いて守るのか、敵陣でボールを回すのか、そのメリハリがなかった。プレシーズンからテストしているポゼッション型を試そうとしたが、思うようにボールを回せず、攻守の切り替えが曖昧になったのかもしれない。そんなあやふやな姿勢が、先制点の献上に繋がったとも言えるだろう。
対する“エル・ブランコ”はボールを失えば素早くリトリート。最後の所は決してやらせてもらえない。ポゼッションとカウンターのメリハリが効いていた。相手との力量差や試合展開に応じて、引くのか回すのかの共通意識を、チームとしてさらに徹底していく必要がありそうだ。
もちろん収穫もある。62分にはペナルティエリアを囲む正確なパスワークから、最後はルカクが詰めて1点を返すなど、攻撃時の連携には一定の手応えを得た。
こうして欧州のトップ・オブ・ザ・トップと戦ったことで、見えてきたものがある。それがモウリーニョの言わんとするところだろう。プレミアリーグに向けて、スーパーカップは“最高のスパーリング”だった。
文・本田千尋
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