プロサーファー堀越力、東京オリンピックを3年後に控えた今、想うこと

 日本を代表するサーフィンのメッカ、鵠沼海岸を代表するプロサーファーの堀越力。湘南地域でも名の知れたサーファーだった父の元、幼少期よりサーフィン漬けの毎日を送ってきたサラブレッドが、東京オリンピックを3年後に控えた今、想うことととは?

ーーまずは読者の方に簡単な自己紹介からお願いします。

堀越 力(以下、堀越):プロサーファーの堀越力で、年齢は20歳です。ホームは湘南の鵠沼海岸で、鵠沼海浜公園スケートパークの前にある通称”スケパー前”っていう海をベースに練習していますね。自分の日常はinstagram(https://www.instagram.com/rikihorikoshi/)によく載せているので、良かったらチェックしてみてください。


ーーサーフィンを始めたきっかけは何ですか? もともと鵠沼では有名なサーフィン一家だと聞いていますが。

堀越:そうなんです、元々お父さんがサーファーだったんですよ。なので海には物心つく前から連れて行ってもらっていて、気づいた時にはお父さんのボードを借りて波乗りしてましたね。多分3歳くらいの頃だと思います。それから小学生で鵠沼海岸に引っ越して海が目の前になったので、毎朝お父さんと海に入って、学校終わりに同世代の友達と海に入っていました。お父さんの影響はやっぱり大きいです。今までの自分のサーフィン人生で一番影響を受けた人だと思います。それと僕は兄弟もサーファーで、妹の優香はSUP(スタンドアップパドル・サーフィン)の競技で日本代表にもなってるんです。すごく恵まれた環境で育ったと思います。


ーーサーフィンの魅力はどんなところだと思いますか?

堀越:海という大自然を相手にするスポーツなので、同じ状態がなく、予測がつかないところですかね。だから終わりがないというか。それにサンセット(夕暮れ)とかもすごくキレイで、そういうのを見ると心も洗われると言うか。あとは年齢関係なくできるのも魅力だと思います。下は小学生から上は50~60代の人までいますよ。自分もコンテストを回った後に地元に帰ってくると、小さい頃からお世話になってた人達と今でも交流してます。


■コンテスト初出場で初優勝

ーーコンテストにはいつ頃から出るようになったのですか?

堀越:初めて出たのは小学校2年生くらいの時で、地元の小さなコンテストだったんですけど、そこで偶然にも優勝することができて。そこから一気に火がついたと言うか、コンテストの楽しさを知って更にのめり込んでいきました。当時はその年齢で出てる人は僕以外はあまりいなかったというのもあるかもしれませんね。今は5~6歳の子供がお父さんと一緒に来て試合にという光景も増えましたけど。そうして小学校5年生くらいの頃にはもう全国規模のコンテストに出ていました。


ーーサーフィンのコンテストはどんな形式で行われるのですか?

堀越:コンテストの規模によっても変わってくるんですが、大体1ヒートに4人くらい出場して12分から長いところだと30分くらい持ち時間があります。その間に8本の波に乗って、ベスト2本の点数の合計で勝敗が決まります。なのでルールはいたってシンプルですね。あとはプロ戦でよく見るプライオリティーというルールを理解してもらえると更にわかりやすくなると思います。これは波に乗る優先権のことで、順番に波乗りしようというものです。基本的にコンテストではひとつの波に1人しか乗れないので。


■カッコイイなって思う選手を見つける

ーーこれから多くの人がサーフィンのコンテストを見ると思いますが、一般の人にはどんなところに注目してみてほしいですか?

堀越:現場でも映像でも同じだと思うんですけど、選手がどういう波に乗って、どういう技をするのかって言うのは個人によって全く違うんです。なので、この人カッコイイな!とかそういう人を見つけながら観戦するのは面白いと思います。今回お話をただいた「AbemaTV」さんは生中継を無料で、とても見やすく放送してくれるので、初心者に入り口にはとても最適だと思いますね。あと最近のサーフィン界は本当に多様化していて、TV番組に出るアイドルのような選手もいるし、硬派なスポーツマンタイプもいます。ルックスやライフスタイルも様々なので、コンテスト以外の面にも目を向けると選手の人となりがわかるので、また違った形で観戦できて面白いと思います。今はSNSの普及もあってそう言った選手の素顔が覗きやすくなったので、それで興味を持ってもらえたら会場に足を運んでもらって、現場の雰囲気や空気感を感じとってもらいたいですね。


■エアートリックで人々を惹きつけたい

ーーでは自分のライディングはどんなところに注目してみてほしいですか?

堀越:エアートリックを見てほしいですね。エアーは波から空中へ跳んで回転したり、ボードを掴んだりするトリックで、サーフィンの中で最も難しい技と言われています。最近は日本人でも出来る人は増えてきましたけど、それでもなかなか出来る人はいないので、自分はそこを磨いています。それに見る方もダイナミックで初心者の人もわかりやすいので、魅力を伝えると言う意味でもすごく効果的だと思うので。


ーー当然といえば当然なのですがサーフィンは冬シーズンにやるのは難しいですよね!? 一年のスケジュールはどんな感じなのですか?

堀越:今年で言うなら、1~2月はオーストラリアに行ってコンテストを回ってましたね。4月くらいから日本のプロ戦もスタートするので、それでインドネシアのバリ島に行ったり、5月には国際大会の日本代表でフランスに行ってました。6月からは国内戦が本格的にシーズンインするので、10月くらいまでは日本をベースに活動しようと思ってます。11月からは世界ツアーの試合が残ってるんで台湾に行く予定です。冬はハワイで練習するつもりです。


ーーサーフィンが東京オリンピックの正式種目になりましたが、決まった時はどう思いましたか?

堀越:自分はすごい嬉しかったですね。サーフィンがスポーツとして世の中に認知された証拠だと思うので、選手としてはもちろん大歓迎です。ここ数年では一番のビッグニュースでした。しかも23歳という肉体的にも一番充実している年齢で迎えることができるので、また新たな目標ができたという感じです。ただ、自分の世代には世界的に活躍している選手も多く、層がとても厚いのも事実です。正直なところ僕らの世代から出場する人が決まると思っています。なのでそのような人たちと切磋琢磨して、自分がその舞台に立てたら最高ですね。まずは現在選ばれている強化選手に残り続けるように努力して、ピークを3年後に持っていけたらと思ってます。


ーーオリンピックに向けて何か取り組んでいることはありますか?

堀越:サーフィンの練習はもちろんなんですが、波のない日はSUPで漕ぐ練習をしたり、常に海に接する形でトレーニングしてますね。あとは茅ヶ崎に林スポーツクラブという水泳のトレーナーでも有名なところがあって、そこでマンツーマンで指導を受けてフィジカルも鍛えています。後は食事にも気を使ってます。自分は食べず嫌いなところがあるので、不足分はサプリメントで摂取したり、苦手なものでも調理方法を工夫して食べるようにしてバランスの良い食生活を心がけています。


ーー現在意識しているサーファーはいますか?

堀越:誰というのは特にありません。ただ先ほどの延長線上になってしまいますが同世代のサーファーはどうしても意識してしまいますね。中でも、最近は海外の選手をよく見てしまいます。それは自分が積極的に世界を回るようになったからこそ気づいたことで、同世代には日本だけじゃなく海外にもすごい選手がゴロゴロいるんですよ。それを実際に体験したことで自分が今まで見ていた目線よりもさらに上を見れるようになったと言うか。今こうして日本にいる間も海外の選手はどんどん成長していくので、常に意識を高く持つようになりましたね。


ーーサーフィン以外では普段どんなことをしていますか?

堀越:サーフィン以外でも常に海と接しているんですよ。もう昔からそういうライフスタイルなので、正直なところ2日間海にいなかっただけでも居心地悪くなるというか(笑)。サーファーの中にはカラオケや買い物行ったりする人もいるんですが、自分は四六時中海と接していて、サーフィン以外と言っても海との接し方が変わるくらいですね。


ーーではサーファーとしての最終目標を教えてください。

堀越:僕個人として世界中のトップ32人しか出られないWCT(ASP World Tour)に出て優勝することです。あとはオリンピックを通してサーフィンが日本に浸透して、様々な企業がサーフィンをサポートしてくれて、世界規模のビッグコンテストが日本で開催されるようになってほしいですね。それと同時に多くの日本人選手が海外で戦える環境が更に整って、サーフィン業界が大きくなってくれたら嬉しいです。


■自然を相手にする気持ち良さ

ーー最後にこのインタビューを読んでいる方に一言お願いします。

堀越:今回の僕の話でサーフィンに少しでも興味を持ってくれたら、老若男女問わず誰でもできるスポーツなので気軽に始めてほしいですね。僕は湘南鵠沼海岸でサーフィンスクールをやっていますし、静岡県の潮見坂という場所でも家族がgrow cafe(http://instagram.com/growcafe96)というカフェ&サーフショップをやっているので、ぜひ足を運んでみてください。そこでも僕に会えます! 海っていう自然を相手に波に乗ることは、絶対に想像以上の気持ち良さを味わえますよ! 気軽に声をかけてくださいね!!


写真:吉田佳央(ポートレート)久我夏樹(ライディング)

編集:吉田佳央

インタビュー:久我夏樹

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