10月6日、日本野球機構(NPB)と労組日本プロ野球選手会の事務折衝が都内で行われた。3時間以上におよび話し合われたのは、オフ時期に行われる契約更改について。選手会側が求めていた書面による金額の事前通知は、NPB側には拒否されたが、口頭で全選手に伝えるということで合意した。選手会の嶋基宏会長(楽天)は「(合意は)100%満足するものではないが、少しずつ進んでいくと思います」とコメントした。事前通知を求めていた最大の理由は「若手選手に考える時間を与える」ため。この背景には、野球一筋で生きてきた選手たちが、不慣れな交渉を1人で行うという現状がある。
契約更改の方法は球団によって異なるが、代理人をつけることが容認された選手を除けば、1人で複数の球団関係者と面談し、その場で提示された年俸について交渉することになる。
嶋会長 楽天の場合は選手1人に球団の方が3人。内容は金額を提示されて、来シーズンどう頑張っていこうとか、そういう話をします。若手の選手であれば、5分で終わる選手もいるかもしれません。
一般企業になぞらえれば「査定面談」のようなものだが、成績次第では高卒選手でも数年で戦力外となる厳しい世界。オフ時期の自主トレ、2月からの春季キャンプ、シーズン、秋季キャンプと、野球漬けの日々を送っている若手選手にとって、学ぶ間もなく交渉の席につくことに、不安を感じる声が多いという。
嶋会長 若い選手からの声が一番多いですね。若い選手は、言いたいことがあっても、なかなか言いづらいこともあると思います。
選手生活も長くなり交渉の場にも慣れてくると、球団の査定とは異なる資料を選手会などと相談・用意し、持参する者もいる。代理人をつけたり、球団側から下交渉を申し出たりする選手は、周囲の意見も聞くことができる。実績のない若手選手ほど交渉する材料がないと言ってしまえばそれまでだが、とはいえ理解も納得もできない交渉で、次シーズンに向き合えるかといえば、それもまた違う。
嶋会長 一番は選手の満足度。全部が全部、満足するものにならないとは思いますが、しっかり話せたと思ってもらえる選手が増えてくれればと思います。
選手会側も、前日に通知されたからといって、その金額が大きく変動しないことは理解をしている。ただ、ほんの5分で来季の自分の“価値”を受け入れるのは難しい。そんな心の叫びが、一部だがNPB側にも伝わった。○年○億円という華々しい契約内容が報じられる中、一覧にまとめて新聞の一部に掲載される、そんな選手が大勢いる。彼らの交渉も、1年で億単位を稼ぐ選手と同じく、人生がかかっている。
(C)AbemaTV
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