3年前、ある日本人選手が決めたゴールが世界中で話題となった。
2014年10月25日、クウェートで開催されたインターコンチネンタルカップ。初戦でブラジルに0-5、第2戦でチェコに0-4と2連敗でグループリーグ敗退が決まっていた。
スーパーゴールが飛び出したのは、グアテマラとの第3戦のことだ。
決めたのは、当時22歳の最年少プレーヤー、室田祐希。ハーフライン付近で相手からボールを奪った室田は、そのままスピードに乗ったドリブルでゴールに向かっていく。GKとの1対1の決定的シーン。ここで室田が見せたのが「ヒールリフト」だった。右足裏でボールをなめると、そのボールを両足で挟み込んで浮かせ、GKの頭上を通してみせる。
鮮やかな弧を描いて決まったゴールは、室田にとって記念すべき日本代表としての初得点でもあった。
日本人選手が決めた“美しすぎるゴール”はインターネットを通じて世界中に配信された。
イタリアの『La Gazzetta dello Sport』やイギリスの『Daily Mail』といった大手メディアに取り上げられ、フットサル界で“神様”と呼ばれ、室田の憧れの選手でもあるブラジル代表のファルカンもSNSに「ゴラッソだ!」と投稿した。
あれから3年。25歳になった室田祐希は大きな成長を遂げた。
11月にタイ・バンコクで行われたAFCフットサル選手権の東地区予選では、3試合連続ゴールを決めた清水和也(フウガドールすみだ)とともにチームを牽引した。
かつての室田は、天才的なセンスを持ちながらも、ムラっ気があることが課題とされてきた。それゆえに、ミゲル・ロドリゴ監督が率いていた日本代表チームでは主力ではなく、ジョーカー的な存在として起用されていた。
室田を変えたのは、U-25代表として臨んだ、今年9月のアジアインドアゲームズ(トルクメニスタン)での経験だった。日本代表では先輩についていく立場だった室田だが、このチームでは最年長。ブルーノ・ガルシア監督は室田にキャプテンマークを託した。
「小学校以来のキャプテンでしたけど、自分としてはすごく大きかったです。正直、今まであまり周りのことは気にするタイプじゃなかった。でも、キャプテンをやることで周りの状況を見るようになりましたし、そういう経験ができたのは良かったですね」
AFCフットサル選手権の東地区予選。ブルーノ・ガルシア監督が求めるチームコンセプトを体現したのは清水と室田のいる1stセットだった。
「僕たちのセットは『ディフェンスから入ろう』と話をしていました。良い形でボールを奪えたことがゴールにつながった」
相手がボールを持ったら、アグレッシブに寄せて、プレーの選択肢を限定する。全員が連動したプレスによって、高い位置でボールを奪い取って、素早くゴールに向かってカウンターを仕掛ける。
室田といえば、ヒールリフトでゴールを決めるようにトリッキーなドリブルが代名詞だ。もちろん、そうした自分の持ち味は出しながらも、チームで求められる役割もしっかりこなせるようになった。
「気がつけば25になりましたし、日本代表でも引っ張っていかなきゃという気持ちがある」
室田は確実視されていたフットサルW杯出場を逃した2016年のAFCフットサルのメンバーにも名を連ねていた。だが、当時はFPの中で最も出場時間が短く、リズムに乗れずに苦しんだチームを救えなかった。そのことは、室田にとって大きな悔しさとして残っている。
もはや、トリッキーなテクニックだけが室田の持ち味ではない。ペスカドーラ町田の11番が見せるすべてのプレーに注目してほしい。
文・北健一郎(futsalEDGE編集長)
室田祐希を擁するペスカドーラ町田は26日の第26節、2位のフウガドールすみだと対決。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで16時45分から生中継される。
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