昨季は12チーム中10位と低迷したのがウソのように、今季は熱い戦いを披露し続けている湘南ベルマーレ。開幕当初の勢いはこの終盤に入っても衰えることなく、残り7試合となった現在も4位を堂々とキープ。5位以上に与えられるプレーオフへの初進出がいよいよ現実味を帯びてきた。
ベテラン・若手を問わずフットサル経験が豊富な選手が揃う湘南。そんな中で、サッカーから転向して間もない新加入選手が確かな存在感を放っている。
背番号7を背負うピヴォ(FW)、小門勇太だ。
小門は92年生まれの25歳。帝京高校→国士舘大学というサッカーのエリート街道を進み、卒業後は関東サッカーリーグ2部の早稲田ユナイテッドやオーストラリア2部のボニリッグ・ホワイトイーグルスなどでFWとしてプレーした。昨季終了後のオフに湘南からのオファーを受けフットサルに転向し、今季が加入1年目だ。
現在はまさにサッカーからフットサルへの適応の真っ最中だが、フットサル経験の浅さを補ってあまりあるポテンシャルをいかんなく発揮。ここまで26試合中22試合に出場し、勝負所での同点ゴールや決勝点など、印象的な活躍を何度も披露している。
ピッチに立った小門の姿を見ると真っ先に目を引くのが、筋肉の鎧をまとったようなその屈強な肉体だ。
競技の特性上、フットサル選手にはサッカー以上に細身な選手も多い。その中にあって、身長179cmながら体重85kgの小門は重量級の部類に入る。特にその太ももはユニフォームのパンツがはち切れそうなほどの太さを誇るが、実はこの丸太のような太ももは父親譲り。というのも、小門の父・洋一は2012年に引退するまで実に30年近くに渡り活躍したプロの競輪選手だったのだ。
洋一は息子・勇太と同じく名門・帝京高校サッカー部の出身。川添孝一(後に三菱重工業サッカー部・サッカー解説者)、名取篤(後に三菱重工業サッカー部→浦和レッズ)らと同期で、FWだった彼の控えにはとんねるずの木梨憲武がいた。
サッカーで輝かしい実績を残した洋一の元には当時の日本リーグのチームから多くのオファーが届いたが、競輪選手だった伯父(後に師匠となる小門道夫)の影響もあり卒業後は競輪の道へ。獲得賞金上位にも名を連ねるなど、文字通り第一線で活躍したトップアスリートだったのだ。
フットサルの道を選んだ息子・勇太にも、そんな父の優秀なDNAは着実に受け継がれている。
前線で身体を張ってボールをキープし、相手DFを背負った状態からでも強引に反転して強烈なシュートを見舞う。全体重を乗せたシュートは見るからに重く、たとえGKの正面に飛んだとしてもキャッチするのは容易ではない。
すでにリーグ戦で5ゴールを決めているが、GKが弾いたこぼれ球に味方が飛び込むなどして決定機になる場面も多く、加入1年目ながら確実にチームの戦力となっているのだ。
キャラの濃い個性的な選手たちが揃う湘南の中でも、そのポテンシャルは間違いなくトップクラス。このままフットサルへの順応が進めばさらに大化けする可能性も秘めている、まさしく“逸材”なのだ。
前節終了時点で2位町田から6位大阪までが勝点僅か6差の中にひしめき合い、史上稀に見る大混戦となっている今季のFリーグ。湘南は初のプレーオフ進出を果たすことができるのか。その鍵を握るのは、トップアスリートのDNAを受け継ぐこの男かもしれない。
文・福田悠(futsalEDGE)
小門勇太を擁する湘南ベルマーレは2日に府中アスレティックFC、3日にエスポラーダ北海道と対決。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで生中継される。
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