11月23日、横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズ、横浜DeNAベイスターズのOB選手に現役選手も加えたエキシビション「ハマスタレジェンドマッチ」が初開催された。
1978年にオープンした横浜スタジアムが、2018年に40周年を迎えるにあたり、今年のシーズンオフから大規模改修が行われる。これを記念して行われた同イベントは、ホエールズ~ベイスターズの歴史で初めての“オールタイム・オールスター”戦。チケットは即ソールドアウトになるなど、単なるファン感謝イベントの枠を超えた歴史的な1日となった。
1950年に球団が誕生して以来、これまでリーグ優勝は1960年と1998年の2回。それぞれ三原脩監督、権藤博監督のもと後年まで語り継がれるインパクトの強い優勝を果たしているが、優勝2回というのはお世辞にも強豪とは言えない。むしろリーグ下位の常連だったが、そんな弱小時代が長いチームにもかかわらず、市街地のど真ん中にある横浜スタジアムとともにファンに愛された球団でもあった。
この日は、大洋時代からのオールドファン、98年のフィーバーを味わったファン、そして最近のDeNAファンと世代を超えたファンが集まった。ここぞとばかりに大洋ホエールズ時代のユニフォームや応援バットを持ってきた人も目にする。驚かされるのは、往年の選手たちの応援歌を歌える人が多いこと。屋鋪要、高木豊、ポンセなど印象的な応援歌が人気だったことも事実だが、応援団の近くだけでなく内野スタンドでもほとんどの選手の応援歌を歌える人が多く、当時の名選手たちがまさに“レジェンド”であることを物語っていた。
試合の方も、エキシビションとはいえさすがは千両役者たち。平松政次、齊藤明雄、遠藤一彦ら名投手のピッチングフォームには心が踊ったし、“無冠の大打者”松原誠は73歳には見えない打棒を見せた。対する98年の優勝メンバーも、野村弘樹、三浦大輔、佐々木主浩に谷繁元信という豪華バッテリーで迎え撃った。佐伯貴弘が隠し玉で一塁ランナーのポンセをアウトにしたり、現在はひげを剃ってさっぱりした“ヒゲ魔神”こと五十嵐英樹が「調子が出ない」とマウンド上でタイムをかけ付けひげを貼るなどパフォーマンスも織り交ぜたりしつつ、最後は佐々木が投げ、筒香嘉智を打ち取る(しかも打球は三浦が守っていたセカンドに飛ぶ)という完璧な筋書きで幸福感あふれる試合を終えた。
それにしても、いい球団になったな、と思う。DeNAになる前のベイスターズは、長年のファンだからはっきり言ってしまうが「選手を大事にしない」球団だと言われたことがあった。功労者に対する扱いが上手ではなく、ベテランがケンカ別れのような形でチームを離れてしまったことも1度や2度ではない。それがチームの雰囲気にも影を落とし、当然チームが強くなるはずもなく…という悪循環に陥っていたといってもいい。それが、DeNAとなってからの6年間でチームは完全に低迷期を脱却した。観客動員数は年々上昇、ファンから愛され、街からも愛される球団として蘇ったベイスターズは、成績でも2年連続クライマックスシリーズ進出と結果を出している。
この日のイベントにも如実にそれが表れていた。ホエールズ時代の選手たちはもちろん、ベイスターズを去っていってしまった選手までもが実に楽しそうにプレーしているのを見て、胸を熱くしたファンは多いだろう。なにより、現役終盤を中日で過ごし、監督・コーチにまでなった谷繁や佐伯が横浜のユニフォームを着て躍動している姿はとりわけ感慨深かったはずだ。そして、その佐伯がMVPを獲得した。ヒーローインタビューの壇上で、佐伯はいみじくもこう言った。「このユニフォームを来てこの球場に立つことはもうないと思っていたので、本当にありがたいと思うし、感謝しています」――。
OBに「もうユニフォームを着ることはないと思っていた」とまで言わせてしまうことに驚くとともに、これが言えるということは雪解けしたということでもある。そこに過去の確執はない。それを感じたからこそ、権藤や中畑清をはじめこの日参加した皆が「楽しかった」「またやりたい」と口にし、ファンにも「いいイベントだった」と笑顔があふれたのだ。
これをもって将来の「谷繁監督」凱旋を期待するのは早計というものだろう。しかし、過去のレジェンドたちが貴重な財産で、人気もいまだ衰えていないことも事実。彼らのDNAと、今のベイスターズが完全に融合したとき、真の黄金時代が来る――そんなことを予感させるレジェンドマッチだった。【大木信景(HEW)】
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