2011年にマンチェスター・ユナイテッドに加入して以来大きなインパクトを残せていなかった選手が、加入7年目、32歳にして花開いた。その選手とは4年ぶりに代表に招集されるなど、今シーズン好調を維持しているアシュリー・ヤングだ。
ドリブル突破やクロス、カットインしてからのミドルシュートなどが売りで即戦力としてアストンヴィラから加入したイングランド代表MFは、ユナイテッドではこれまで目立った活躍ができていなかった。初年度こそリーグ戦6ゴール6アシストと悪くはない結果を残したものの、その後は年間平均1ゴール2アシスト。褒められた数字ではない。
パフォーマンスが低調だった理由
ヤングのパフォーマンスが低調だった理由は主に2つだ。
1つは怪我が多くコンディションが安定していなかったこと。独メディア「Transfer Markt」によると、ヤングは過去6年間、毎シーズン平均で約10試合も負傷離脱していたというデータがある。これはシーズンの20%程度も怪我でプレーできない状態であることを意味する。怪我明け後、試合勘を取り戻すのに時間がかかることを考えると、実質的な離脱期間はそれ以上だ。
結果、マッチフィットネス(試合体力)が上がりきらないままプレーすることになってしまう。キックの精度が低いのでDFはキックフェイントにも引っかからない。結果、ボールを持っても状況が打開できないことが多かった。
もう1つの理由は、戦術的な変化の適応に苦しんだことだ。彼がユナイテッドに加入した頃から数年間で、イングランドにおけるウイングに求められる役割が大幅に変わった。
数年前までウイングに求められる役割は主に、対面するサイドバックを突破すること。そして、クロスを上げることだった。しかし、スペイン代表の躍進とともにポゼッションを重要視する潮流にユナイテッドも影響を受け、徐々にパスワークの起点となることや、ピッチ中央での崩しに参加することが求められるようになる。サイドに張り続けてクロスをあげることを得意とする選手にとっては少し厳しい戦術的な変化だったといえるだろう。
コンバートで本来の輝きを取り戻す
しかし昨季から、ユナイテッドでサイドバックにけが人が続出したこともあり、彼はポジションを1つ下げることで活路を見出した。サイドに張り続けることが可能かつ、ウイングほどプレッシャーのないサイドバックやウイングバックは、クロッサータイプのヤングには心地よかったのだろう。
試合を重ねることで徐々に自信も取り戻していったようだ。ロメル・ルカクというターゲットマンが加入したのも大きかったが、GKとDFの間に落とす精度の高いクロスを何本も供給するようになり、ヤングはユナイテッドの攻撃の柱の1つとなりはじめる。
特に目立ったパフォーマンスを見せたのは14節のワトフォード戦。抜群のクロスを供給するだけでなく、そのクロスをおとりにキックフェイントでドリブル突破するなど抜群のプレーを見せた。なによりこの日、カウンターとセットプレーからミドルを2本ネットに沈めた。そのキック精度の高さに、ユナイテッドのレジェンドであるデイヴィッド・ベッカムのキックの思い出と重ねるサポーターもいたほどだ。
年齢的には若くなく、トップレベルで活躍できるのは今シーズン、来シーズンくらいが精いっぱいかもしれない。だからこそあと少しの時間、彼の右足から放たれる美しい軌道のボールに注目して試合を観戦したいところだ。
文・内藤秀明
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