46億円の高額移籍金DF
守備の穴になっている――。
シーズン当初、そんな風に呼ばれたDFがここにきて覚醒し始めた。スウェーデン代表のビクトル・リンデロフだ。
1994年生まれの23歳は、ヴェステロースSKから2012年にポルトガルの強豪ベンフィカへ加入。足元の技術と球際の強さを併せ持つセンターバックとして頭角を表すと、2016年12月には、「UEFAチャンピオンズリーグでブレイクしたベストイレブン」にも選出された。その活躍が認められ、ジョゼ・モウリーニョ監督率いるユナイテッドに引き抜かれた。
リンデロフのユナイテッドへの移籍を後押ししたのは、同郷のレジェンドでもあるFWズラタン・イブラヒモビッチだったといわれている。だが、開幕当初のパフォーマンスは、「ズラタンのイチオシ」にふさわしいものではなかった。
ペナルティボックス内では安易に足を出してPKを献上し、空中戦も勝てず、クロス対応では足を滑らせてしまう。3100万ポンド(46億円)という高額な移籍金がかかったことで、サポーターからの期待値が上がっていたのも不運だったかもしれない。
とりわけ、ひどかったのは、2失点に絡んだ10月21日のプレミアリーグ第9節ハダースフィールド戦だろう。
1失点目では、起点こそフアン・マタのパスミスだったが、その後相手のドリブル突破に翻弄されて、あっさりシュートを打たれてしまう。結果そのこぼれ球からアーロン・ムーイに先制点を許してしまった。
2点目にいたっては致命的だった。相手GKが蹴ったなんでもないパントキックの目測を誤って後ろにそらし、ローラン・ドゥポワトルに追加点を与えてしまったのだ。
それまでリーグ戦8試合中7試合を無失点かつ、無敗だったユナイテッドだったが、リンデロフのミスが響いて1-2で敗戦を喫した。
ビルドアップ能力の高さがユナイテッドの武器に
だが、モウリーニョ監督はすぐに諦めなかった。リンデロフを我慢強く起用し続けて、プレミアの水に慣れさせていったのだ。
11月28日のプレミアリーグ14節ワトフォード戦あたりからは、決定的なミスをする場面は明らかに減っていった。ボールを持つと両足を使って長短のパスを中盤や前線に供給し、守備の場面では読みのよさを生かしたインターセプトなど、本来の実力を発揮し始めた。
15節アーセナル戦(◯3-1)、16節マンチェスター・シティ戦(●1-2)というプレミアの強豪との試合での堂々としたパフォーマンスは、サポーターの信頼をつかむのに十分なものだった。
もちろん、スピード系のFWへの対応力など不安要素はゼロではない。それでもビルドアップが苦手なCBが多いユナイテッドにとって、リンデロフは貴重な存在といっていい。3バックへの適性が高く、戦術的な幅が出せるのも大きい。
今ならイブラヒモビッチが強く推したのは、同郷びいきでなかったことがよくわかる。
文・内藤秀明
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