フットサルにおけるGKは、サッカーのGK同様に非常に重要なポジションだ。ブラジルでは「フットサルの試合の半分はゴレイロ(GK)が決める」とまでいわれるように、そのできが勝敗を大きく左右する。
さらにGKのポジションは1つしかないため、2番手や3番手の選手にはなかなか出番が回ってこない。ましてや、レギュラーのGKが日本代表だったりするとなおさらだ。出場機会を求めて他クラブへ移籍する選手も少なくない。
だが、名古屋オーシャンズにその常識を覆すGKがいる。名古屋で9年目を迎える、篠田龍馬だ。
名古屋オーシャンズには、加入2年目の関口優志という日本代表GKがいる。やべっちFCのフットサル対決にもペスカドーラ町田のGKイゴールとともに何度か出演しているので、その名をご存知の方も多いだろう。関口は、高い身体能力を活かしたプレーが特徴で、反応の速さや身体のバネの強さはリーグ屈指。関口クラスが同じチームにいれば、ほとんどの選手はなかなか試合に出られないことだろう。
しかし、篠田は違う。関口とはまったく異なる特徴を武器に、堂々のレギュラー争いを演じているのだ。ペドロ・コスタ監督も「篠田も関口と遜色ないレベルのGK。どちらかひとりをレギュラーに固定するつもりはない」とその実力を高く評価している。
現にその言葉通り、ここ3試合は篠田が先発フル出場を果たしている。ハイレベルな次元で互いに切磋琢磨するその様子は、まるでかつてサッカー日本代表で熾烈なレギュラー争いを演じた川口能活と楢崎正剛のようだ。
ダイナミックなプレーが持ち味の関口が“川口型”だとするならば、篠田は安定感が持ち味の“楢崎型”だ。身長こそ171cmと小柄だが、それを補って余りある正確なポジショニング、味方への的確なコーチングなどによって後ろを引き締める。好不調の波も少なく、チームに落ち着きをもたらすことができるのが持ち味だ。
そして篠田のプレーを見る際にもっとも注目していただきたいのが、リーグ屈指の精度を誇る正確なスローイングだ。しなやかなフォームから繰り出されるそのボールは、味方がトラップしやすいように回転まで計算されている。大げさではなく、数cm単位でのコントロールが可能で、わずかな隙間を通してチャンスにつなげることができる。
なぜそんなにも正確なコントロールを身に付けることができたのだろうか?
そのルーツは小学生の頃にまで遡る。大半のFリーガーは幼少期からサッカーをプレーしているが、篠田は小学生の頃に野球とドッジボールをプレーしていた。しかも、ドッジボールではなんと全国優勝を果たしているのだ。
「子どもの頃の自分にとって、ボールは蹴るものではなく投げるものでした」と振り返る篠田。野球でのポジションはショートだったというが、現在のスローイングのフォームも、どことなくファーストへの送球を想起させる。
前節のフウガドールすみだ戦でも持ち前の安定したプレーで1失点に抑えたほか、意表を突いたドリブルシュートでゴールまで決めるなど、篠田は今まさに波に乗っている。
篠田自身もフットサル日本代表として2020年のワールドカップに出場することを目標に掲げているが、関口とのレギュラー争いを制して結果を出し続ければ、その夢はおのずと近付くはずだ。
日本代表GKと堂々のレギュラー争いを演じ、幼少期にはサッカーではなく野球とドッジボールをプレー。FリーグのGKの常識を色々と覆している名古屋・篠田のプレーに是非注目していただきたい。
文・福田悠(futsalEDGE)
篠田龍馬を擁する名古屋オーシャンズは17日にバルドラール浦安と対決。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで13時45分から生中継される。
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