横浜DeNAファンがグッと来た! 2017年シーズンの名場面3選

 2年連続で進出したCSを勝ち上がり、日本シリーズ出場を果たした2017年の横浜DeNA。今シーズンを振り返ると、19年ぶりとなる日本シリーズ進出、首位広島相手の夏場の3試合連続サヨナラ勝利など大きな話題もあった一方で、派手ではないもののファンの心に残るシーンも多かった。

■ウィーランドが好救援の須田をボコボコにどつく!?

 今年の横浜DeNAを語る上で外せないのが、安定したピッチングと野手顔負けのバッティングで“ハマの二刀流”と呼ばれたウィーランド投手の活躍だ。今季から新加入した右腕が初勝利を挙げた4月28日の広島戦、勝利以上に印象的だったのが、ウィーランドが見せた熱さと粋な計らいだった。


 好投を続けながら勝ち星に恵まれず未勝利で迎えたこの試合で、打線の援護を受けたウィーランドはリードしたまま6回のマウンドに上がった。しかしここで丸にソロホームランを浴びると、その後も連打を許し失点。さらにヒットを打たれ無死満塁でマウンドを降りることになってしまった。一打同点というピンチだったが、あとを受けた須田が代打西川を三振に斬って取ると、続く代打新井を併殺打に打ち取り無失点。絶体絶命の状況を乗り切った。


 これにはウィーランドも喜びを爆発。ベンチでハイタッチを繰り返す須田に近寄ると、グラブで思い切り須田の胸を叩き歓喜の叫びを上げた。須田がガッツポーツで応えると、その胸をさらに強く殴りつけ、感謝と興奮の咆哮。中継で映し出されたこのシーンがネット上で「なぜかウィーランドが須田をボコボコにした」と話題になるほど激しい喜び方だった。


 ウィーランドは翌日、須田のロッカーにお礼のワインを置いたという。リリーフ投手に見せた熱さと、粋なお返しに、ウィーランドのチーム愛を感じたファンは多いはずだ。


■筒香、泥だらけプレーでチームを鼓舞も“刀”は汚さず

 10月15日に甲子園で行われたCS第2戦の阪神戦は、どしゃ降りの中強行されたことで歴史に残る“泥試合”となった。結果は横浜DeNAがCS史上最多となる21安打13点で打ち勝ち、1勝1敗のタイに。日程の都合で振替試合ができないため、雨天中止がCS敗退につながりかねない状況で、悪天候の中もぎ取った勝利は、横浜DeNAを勢いづけるものだった。


 その中で筒香が見せた気概に心打たれた人は多いだろう。同点に追いついた5回、2死一塁で打席に入った筒香は、石崎の投じた顔付近のボールにのけぞると、田んぼのようにぬかるんだグラウンドに足を取られ転倒してしまった。ユニフォームが文字通り真っ黒になった様子はこの試合を象徴するシーンとして話題となったが、ファンが注目したのは転んだ際もバットを投げることなくしっかり持っていた所作だった。バットを地面に杖のようにつくこともせず、それどころか泥まみれの地面に触れないように自分は倒れてもバットだけは守っていた。それはまるで、刀を自分の魂として大事に扱う武士のようだった。 結局筒香はこの打席でヒットを放ち、勝ち越しに繋げた。


■ヤスアキ、守護神降格からの快投でファンの前で涙

 筒香や桑原など、主軸の不調があった今年前半。守護神・山崎康晃もその一人だ。らしくない投球が続いた4月中旬、セットアッパーのパットンの調子が良かったこともあり、山崎は抑えから中継ぎへと配置転換された。


 中継ぎという役割で奮闘する4月のある日、7回を三者三振で斬って取った山崎が、試合後に球場の外で勝利の陰の立役者にヒーローインタビューする「アンコールヒーローズ」に登場した。勝利を呼び込んだピッチングについて語った山崎はインタビューの最後、まだ先が長いシーズンの抱負について聞かれると、「最初はクローザーで始まりましたけど…」と言ったきり言葉に詰まってしまった。悔しさと、大声援を送ってくれるファンへの感謝が入り混じった涙を流しながら山崎は、「クローザーというプレッシャーの中で戦っていて、寝れない日もあった」「パットンもいい投手ですし、彼もプレッシャーと戦ってる。僕も応援してる」と語った後、「なんとかクローザーという場所に戻れるように」と自らの定位置への思いを明かした。


 その言葉通り、中継ぎで無失点ピッチングを続けた山崎はおよそ1カ月で守護神に復帰。CSを決めた試合も、日本シリーズを決めた試合も、最後のマウンドには山崎がいた。【大木信景(HEW)】

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