『やべっちF.C. 』(テレビ朝日系)で昨年末に放送された「フットサル対決」。小野伸二や稲本潤一、本山雅志、小笠原満男といった1979年生まれのゴールデンエイジに加え、日本屈指のテクニシャン・松井大輔や、Jリーグ優勝メンバーの中村憲剛が繰り出すプレーは、まさにハイレベルそのものだった。
試合終了後、ハットトリックの大活躍を見せた“やべっち”こと矢部浩之が、共闘したフットサル日本代表の清水和也(フウガドールすみだ)と感想を語り合った。
やべっちが「好きになった」Fリーガーとは?
――本当に劇的な試合でした。
矢部 疲れました……。でも、いつも以上にゴールデンエイジが中心で、楽しい試合になるのかと思ったら、みんな徐々にエンジンが掛かってきて……(笑)。その中で、Fリーグの選手たちも、すごく力を見せながらやってくれていたなと思います。
――矢部さんはそんな中でハットトリックの大活躍でした。
矢部 それはよかったんですけど、本当に毎回毎回、みんな僕を探してパスをくれるんですよ。ありがたいことに。
――でも、矢部さんからのアシストも光りました。今回は小笠原選手のプレッシャーがすごくて、矢部さんは「これ“鹿島イズム”なんかな、大人げない!」と言っていましたが、それをかいくぐって送り出したゴール前へのパスでした。
矢部 トラップをしてたら「あ、これはもう取られる」って思っていたので、結構ダイレクト気味に出したのがよかったのかな。それがゴールに結び付いたのかなって思いました。
清水 あの時にちょうど相手チームが選手交代していて、僕をマークする選手がいなかったんです。それで矢部さんのところにパスが出るのが見えて、「これはゴール前に詰めたらチャンスだな」と走ったら、あとはボールに触るだけで決められる最高のパスが出てきました。
矢部 去年、決勝点をアシストしてくれたからね。お返しできてよかった。でも清水選手は、去年すごいゴールを見せてくれたから、今回も狙っていたと思うんですよ。今年はちょっと遠慮がちだったけどね。
清水 今年はどちらかというとバランスを意識していたんです。それに、皆本晃選手がどうしても点を取らなきゃいけないってプレッシャーを背負っているように見えたので……(※編集部注:皆本選手は、テレビ朝日の番組HPおよびAbemaTV のFリーグ中継内で実施したファン投票で1位となって初出場)。
矢部 そうそう、交代だって言われてるのに、まさかの拒否(笑)。
清水 皆本選手は普段は守備にいることが多いので、僕は前に行きたかったんですけどね(笑)。
矢部 完全に皆本選手のせいだな。でもね、僕は彼のキャラクターが好きになりました。ファン投票で選ばれたこともそうだし、こういう番組なので、やっぱりテクニシャンが来るのかと思っていたら、本人も話していた通り、ディフェンシブなんですよ。だから投票したファンの人も番組をよく分かっているなと。ちゃんと矢部にパスをできる人が選ばれた(笑)。でも例の交代のシーンでは、彼自身ファンをがっかりさせられないという思いがあって「もうちょっと待ってくれ!」となったと思うんです。交代を拒否した選手はたぶん、番組史上初めてですけどね。ただそういうのも含めて、いいなぁって思いましたよ。
――相手チームで印象に残った選手はいますか?
矢部 小野伸二はすげーなって思いましたよ、相変わらず。彼は本当に見ている人が楽しめるようなプレーをしますよね。でも彼らゴールデンエイジは『やべっちF.C.』が始まった時代に、番組でもどんどん出てきてくれた世代なんです。ゴンさん(中山雅史)や名波(浩)さんの世代は、やっぱりまだ、おふざけはあんまりできないような時だったから。そういう意味でも、彼らには思い入れがありますよ。
――そして今回は、その次の世代の中村選手も、試合をすごく盛り上げていました。
矢部 そうそう。だからこそ、ゴールデンエイジが作ってくれた「ああいうのもやっていいんだ」という、ファン、サポーターが喜べるような文化を、ちゃんと引き継いでいますね。
「Fリーグで清水選手を見たい」(矢部)
――清水選手は、どちらかというとプレー面で気になった選手がいたんじゃないですか?
清水 そうですね。僕は、松井選手のシュートパターンの多さがすごいなと思いました。インサイドキックだけじゃなくて、つま先を使ったりしていて。稲本選手もそういうトーキックでGKの頭上を狙っていましたし、すごく落ち着いているなと。フットサルはサッカーよりも相手との距離が近いですけど、普段とは異なる間合いやタイミングでも関係なくやれるところは、本当にすごく勉強になりました。
――中村選手のプレーはどうでしたか?
清水 キックの精度がすごく高かったです。インサイドで蹴っているのに、まるでインステップで蹴っているような音がしたんです。ボールへのインパクトの伝え方がすごいな、と。
矢部 やっぱり、フットサル選手とサッカー選手の間では、そういう技術面での気付きも多いでしょうね。お互いに駆け引きのおもしろさみたいなものもあるんじゃないかと思います。
――清水選手にとっては、そうした意味でもすごく貴重な経験だったんじゃないかと思います。
清水 本当に楽しみながらやらせてもらう中で、まさにそういう気付きがすごくありました。選手としてはもちろん勝敗にこだわってやらないといけないのですが、その中にも楽しさがあって、それを表現することで、見ている人の心をつかめると信じてやっています。だからこそ、勝負へのこだわりと魅せるプレーの両方を、自分自身が楽しんでやることが大事だなって改めて感じました。これからも、まずは自分が一番楽しみながらやっていきたいなと、番組に出させていただいて思いました。
矢部 初めて来てくれたのが19歳で、その時は「若いなぁ、細いなぁ」って感じましたが、あっという間に体も大きくなっていました。だから成長具合を身近で見られている感覚があって、すごいなぁって。番組だから、やっぱり気を遣うところはあるけど、徐々に慣れてきて、魅せられることも増えていますし。でもやっぱり、去年のアレが忘れられない。引き出しはいっぱい持ってるから、まだまだ楽しみにしています。
――では、清水選手のプレーの続きを、ぜひFリーグの試合会場で見てもらいたいですね。
矢部 それは本当に見に行きたい! 清水選手のプレーは絶対エグいと思うし、生で見られたら、フットサルの見方がまた変わるんじゃないかな。
――清水選手はまだ20歳ですが、早くも日本の未来を背負っていますからね。
矢部 それは本当にすごいですよね。フットサルって、少し前まではサッカーをかじっていた人がやるものみたいなイメージもあったけど、今はフットサルから入っていく時代になったし、清水選手はもう、子どもたちの憧れの存在でもあるわけでしょ? かっこいいなぁ。
清水 ありがとうございます。でも去年、この番組に出させてもらった反響もすごくあったので、その分、今年は結果を出せなくて……。もっともっと頑張ります!
文/構成・本田好伸(futsalEDGE)
写真・厚地健太郎
地上波では紹介し切れなかった試合の全貌が、1日6日(土)、AbemaTVで60分の完全版として放送される。地上波放送を見逃した人も、まだ見ていない人も、あの最高の戦いを、じっくりとご覧いただきたい。
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