「自分改革」。
平昌五輪日本代表・宮原知子がオフィシャルブログにアップした、最新記事のタイトルだ。記事の中では、五輪前最後の試合である四大陸選手権を「自分の弱さを知り、改めて様々なことを見直すことができた大会」と振り返っている。
“ミス・パーフェクト”と呼ばれる宮原は転倒が非常に少ない選手だが、四大陸選手権のフリーでは3回転サルコウで転倒した。サルコウは復帰戦のグランプリシリーズ・NHK杯でも2回転になるミスがあり「はまっていない」と宮原本人もコメントしていたジャンプで、五輪に向けての課題といえるかもしれない。
加えて四大陸選手権のフリーでは、3つのコンビネーションジャンプのうち2つでとられた回転不足も、得点が伸び悩む原因となった。以前課題だった回転不足を少しずつ克服してきた宮原だが、今も不調の時には顔を出す弱点となっている。結果、ショート首位から総合3位に後退。メダリスト会見で涙を見せた宮原はブログでも「悔しい結果でした。自分に負けた試合でした」としている。
昨季終盤の試合を左股関節疲労骨折のため欠場した宮原は、根気強くリハビリを重ね、今季11月のNHK杯で復帰を果たす。指導する濱田美栄コーチも出場するか否か悩んだという復帰戦は5位だったが、続くグランプリシリーズ・アメリカ大会で優勝。さらに補欠だったグランプリファイナルにもエフゲニア・メドベデワ(ロシア)が欠場したため出場(結果は5位)し、試合を重ねるごとに調子を上げてきた。そして、五輪代表選考がかかる大一番・全日本選手権で見事に優勝。フリーを滑り切った後、いつも控えめな宮原が見せた大きなガッツポーズには喜びがあふれていた。苦しい時期を地道な努力で乗り越えた宮原は、ついに平昌への切符をつかみ取る。
ただ怪我の克服のためには栄養や睡眠など生活のすべてを見直す必要があり、全日本選手権後も怪我を考慮して長く休んだため、本調子に戻らないまま迎えてしまったのが四大陸選手権だった。濱田コーチによれば、1月上旬に左足甲に炎症が出て、ジャンプを跳ぶと痛みがあったという。努力家として知られ、ひたすら練習を積むことで日本のエースにまで上り詰めた宮原にとり、体と相談しながらの調整を行っている今の状況は難しいこともあるのかもしれない。
試合直後は悔しさを隠せなかった宮原だが、ブログでは「全日本選手権とはまた違った課題と収穫の多い大会でした。この大会を経て、自分を改革して行くために、さらに踏み込んでいきます!!!」と力強く宣言している。「今大会最後のバンケットでは、気持ちを晴らすべく、思う存分笑いました!」として日本代表の選手たちと一緒に笑顔で写っている写真も添えられており、気持ちは既に平昌に向かっているようだ。怪我から復帰した宮原は、負傷する前の張り詰めた様子に較べ笑顔が増えた印象があり、スケート、そして試合を楽しんでいる様子が見て取れる。
宮原はブログに「最後になりますが、いよいよ平昌五輪が目前になりました」と記している。
「どんな舞台なのか、不安とともに興奮もしています。この貴重な経験ができることを感謝すると共に、身に染み込ませて、ベストを尽くします!」
今季見事に復活を遂げて五輪代表になった宮原だが、四大陸選手権では怪我と慎重に向かい合いながら試合で結果を出すことの難しさも感じさせた。しかし困難を超えてきた宮原にはすべての経験を自分の糧にする力と、何より滑ることの楽しさを再確認した強さがある。四大陸選手権の失敗も、夢見てきた五輪でベストを尽くすための過程となるはずだ。帰ってきた「ミス・パーフェクト」は、完璧な滑りを世界に見せるべく平昌に臨む。
文・沢田聡子
写真・西村尚己/アフロスポーツ
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