大きな目標を達成したチームは、次の年に苦しむ――。スポーツの世界には、そんな法則がある。
前年度、就任3年目の木暮賢一郎監督率いるシュライカー大阪は、Fリーグの歴史を変えた。9連覇中だった名古屋オーシャンズの牙城をついに崩し、リーグ、プレーオフの両方を制する“完全優勝”を果たしたのだ。
だが、Fリーグ王者として臨んだ2017-18シーズン、大阪は苦しんだ。33試合186得点、1試合平均5.6得点を誇った驚異的な得点力は大幅に減少(33試合144得点)。接戦を勝ち切れず、勝ち点を伸ばせず、優勝争いから離されてしまう。
「本当に、ちょっとしたところだと思います。プレーだけじゃなく、メンタリティとかグループとか……。メンバーも監督もやり方も変わっていないのに、なかなか調子が上がらなかった。いいメンバーがいるから勝てるというわけでもない。チームというのは難しいものだと感じました」
昨季、リーグMVPになった小曽戸允哉はこう振り返る。ちょっとしたズレがあると、まるでうまくいかなくなる。実力があるのに勝てない、今季の大阪の苦戦はチームスポーツの難しさを感じさせるものだった。
結局、最後までエンジンがかからないまま、5位で出場したプレーオフでも1回戦敗退となった。リーグ戦終了後、大阪に優勝タイトルをもたらした木暮監督は退任を発表した。
比嘉リカルド新監督が就任して臨んだ全日本選手権は、大阪にとって「自分たちの強さ」を改めて示す場所でもある。
準々決勝ではペスカドーラ町田と2-2で迎えた後半残り6秒での勝ち越しゴールで制した。浦安戦では2点を先行された。今季の大阪は、試合展開が思い通りに運ばないと、気持ちが切れて崩れることが多かった。
しかし、大阪は崩れなかった。チーム一丸となって2点差を追いついたのだ。後半、反撃の狼煙となるゴールを決めた小曽戸は気持ちの重要性を強調する。「大阪はまだ終わっていないところを示したかった。そのきっかけになるゴールを決められてよかった」。3-3で延長・PK戦にもつれ込みながらも、決勝進出を果たした。
昨季のような圧倒的な強さは見せられていない。ただ、リーグ戦では感じられなかった一体感のようなものが、今のチームはある。浦安とのPK戦で勝利を決めるシュートを決めたのは、今季限りでの引退を発表している佐藤亮だった。
「このメンバーで優勝したいという気持ちはありますし、すごく良い雰囲気になっている。今年はタイトルをとれなかったので、全力でタイトルをとれるように頑張ります」(佐藤)
これまでキャプテンとして引っ張ってきた佐藤の最後を優勝して送り出す――。そんな気持ちも、大阪にとってモチベーションになっている。
3月11日、決勝の相手は今季、Fリーグ王者になった名古屋オーシャンズ。最強軍団に勝って2連覇を果たせば、多くの人はこう思うに違いない。やっぱり、大阪は強かった、と。
文・北健一郎(futsalEDGE編集長)
第23回全日本フットサル選手権は、決勝(シュライカー大阪vs名古屋オーシャンズ)が14時45分〜AbemaTV(アベマTV)のSPORTSライブチャンネルで生中継される。
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